2017年1月26日木曜日

Gaston Leroux: The Phantom of the Opera

【タイトル】
The Phantom of the Opera

【出版社】
PENGUIN READERS

【レベル】
   5

【感想】
 私は『オペラ座の怪人』の映画が好きで、本でも読んでみたいと思い、この本を手に取ってみました。ストーリーそのものにも映画とは異なる点があるのですが、映画と違って文章で物語と向き合うと、視覚的イメージに拘束されないので、映像以上にに想像を掻き立てられ、怪人の描写が恐ろしく感じられました。しかし、怪人と呼ばれる男の辛い過去と孤独さが明かされ、純粋な愛に僅かでも触れられた大きな喜びが彼の口から語られると、その切なさと彼の人間的な情動に心が動かされます。
  さて、誰が彼を怪人たらしめたのでしょう。彼自身でしょうか。運命でしょうか。それとも周囲の誰かでしょうか。人間が人間らしくいるとはどういうことなのか、考えさせられる作品です。

【印象的な英語表現】
・Raoul answered, "Maybe" with so much desperate love that Christine could not hold back her tears.

Christine が彼女の控え室で怪人の声と話しているのを、部屋の中のカーテンに隠れてRaoulは見ていました。そのことをChristineに打ち明けると、ChristineはRaoulに殺されたいのかと忠告します。その問いに対してRaoulは"Maybe "と答えたのでした。
  so that構文は高校リーディングの授業で現れたら先生か必ずといってよいほど生徒に注意を促す構文というイメージくらいしかありませんでした。しかし、この文を読んで、so that構文はこんな複雑な人間の感情を表現できるのかと感銘を受けました。


・The Persian could not hold his tears as he looked at that masked man, who was holding his heart and crying with pain and love at the same time.
・I have tasted all the happiness the world can offer!

同じ場面から二つの表現を紹介しました。
 あらゆる出来事が過ぎ去った後、怪人は、Christineに愛をもらった感動をthe Persianに語ります。the Persianは怪人の半生をよく知っており、怪人の言葉に涙をこらえられませんでした。hold his heartというのは概念的にしか捉えられないと思うのですが、怪人が人間らしく感動を噛み締めている、そしてそこには痛みと愛情が入り混じった涙がある、そんな緊張感のある感情がこの文から伝わります。
 そのあとに続く怪人の台詞の一つが、二つ目の文です。彼が得たChristineからの愛は一瞬のものでした。彼にとってはそれが初めての愛で、世界の全てと思われたのですが、読者の多くは、彼が本来得られただろう幸せはもっとあったと感じると思います。文字通りの意味では幸せを噛み締めているけれどもだからこそ読者に悲痛な思いを感じさせる、言葉の力強さを思わされる表現でした。

【投稿者】
   coli  

【ポイント数】
これまでのポイントは 15ポイント( 2017/01/26 )

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